論文投稿者の声 OPINIONS OF PAPER CONTRIBUTORS
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻 看護学講座 武藤 諒介
私は、本学会誌に掲載頂きました論文「A病院ICUにおける二交代制勤務導入前後の看護師のバーンアウトおよび職務満足度の変化」で2022年度奨励論文賞を受賞させて頂きました。
現在は教職として看護学生の教育を行っておりますが、本研究は当時所属していたICUから教職に移った年に行った思い入れのある研究になります。当時行われていた二交代制勤務の導入を研究として客観的に評価し、結果を臨床現場に返したいという思いが本研究の実施を後押ししていたように思います。
今回、論文掲載を経て、このような賞を頂いたことで改めて協力くださった皆様へ恩返しができたのではないかと思っています。自分のこれからの役割の一つとして臨床と研究、教育を結び付けていくことが大切だと思っています。これからも精進して参りたいと思います。今回、論文投稿者の声としてこのような機会を頂きありがとうございました。
【原著】
「A病院ICUにおける二交代制勤務導入前後の看護師のバーンアウトおよび職務満足度の変化」2021年17巻p.1-10
三重県立看護大学 成人看護学 関根 由紀
私は、今までの臨床経験や研究活動の中で、集中治療を終えた心不全患者が初回立位時に 自身の足で立てず自信や治療への意欲を失う患者と多く出会い、そのような状況にならないための看護が必要だと考えています。現在は、早期リハビリテーションが行われ初回に立てる患者が増えていますが、そうでない患者もいます。私は集中治療後に初回立位が取れる、取れないには何か要因があるのではないかと考え、今回の研究に取り組みました。データ収集は大変でしたが、どのような結果が得られるのか、どのように臨床に還元できるのかが楽しみでもありました。
今回の研究成果は、初回立位が困難と予測される患者に対して、状態が安定したのちに看護師もリハビリテーションを行うことや患者に心構えを促し、安全な初回立位の実施や患者が自信を失わずに前向きに治療やリハビリテーションに取り組み、社会復帰に向けた看護につながるのではないかと考えています。
総合病院 土浦協同病院 上澤 弘美
2013年度に「初療で代理意思決定を担う家族員への関わりに対して看護師が抱える困難と理由」の論文が掲載され、2021年度には「生命の危機的状態で初療室に救急搬送された患者の家族がたどる代理意思決定のプロセス」の論文で優秀論文賞を受賞いたしました。論文が掲載されるまで、査読者の先生方から多くの建設的な意見をいただき、修正を重ねるごとに良い論文になっていくことを実感することができました。論文が掲載された時には、成し遂げたという達成感と同時に自身の論文が多くの人の目に触れる機会が増えることで、少しでも臨床の現場での看護実践に寄与することができるという思いが膨らみました。
論文が掲載されるまでの道のりは、決して楽なものではなく辛く険しい道のりですが、論文の内容が現場での問題解決の一助となったり、新たに看護実践に取り組んだりするなど、実践の現場に寄与することができていると実感することが、研究を行う原動力になっています。
【原著】
「生命の危機的状態で初療室に救急搬送された患者の家族がたどる代理意思決定のプロセス」2020年16巻p.41-53
大分大学医学部附属病院 竹下 智美
私は、平成28年(2017年)に大学院修士課程において、「人工呼吸器離脱プロトコルの有効性の検証」を研究課題として取り組みました。
当時、高度救命救急センターで勤務しており、業務としてプロトコルを活用することと、研究としてデータ収集することは当然ながら全く異なり、研究計画段階に苦労したことを覚えています。研究プロセスを通して研究者としての立ち位置、研究倫理をあらためて深く考えることができました。論文投稿においては、査読を受け修正を繰り返す過程は大変ではありましたが、推敲を重ね、完成・受理された時は、達成感とともに共著者とご指導・ご助言いただいだいた方々への感謝の気持ちでいっぱいでした。研究を通して、探求する面白さを経験でき、この気持ちを忘れずに今後も臨床研究・臨床実践につなげていきたいと思います。
長崎大学大学 院医歯薬学総合研究科 保健学専攻 大山 祐介
「Verification of construct validity for comfort indicators of critically ill patients」というテーマの論文が令和4年に奨励論文賞を受賞しました。
救急患者にかかわる中で、苦痛を緩和することの難しさを感じていたことが、このテーマで研究に取り組んだきっかけです。クリティカルケア看護におけるコンフォートとは何か?と探究するなかで以下のことを見出しました。それは患者さんが「症状緩和」「自立性」「平静」「満足」を知覚することです。これらに含まれる要素は重症患者がコンフォートであるかアセスメントする視点や目標になると考えています。現在、患者を対象にしたコンフォートに関する研究を継続しており、その結果をもとにさらに内容を洗練させていく予定です。研究成果を発表することで、臨床での看護実践や患者の回復に貢献できるよう努力したいと思います。また、この研究でご協力いただいた看護師の皆様にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。
【研究報告】
「急性・重症患者看護専門看護師が患者のcomfortに向けたケアにかかわる体験」2020年16巻p.54-64
中部大学 生命健康科学部 保健看護学科 江㞍 晴美
この度、論文「集中治療後症候群を早期発見するためのアセスメントツールの信頼性と妥当性の検証」に対して、令和4年の奨励論文賞をいただき誠にありがとうございました。大変励みになります。査読の先生方、選考していただきました先生方に深謝いたします。
皆さんも経験があると思いますが、研究を行う過程では、多くが辛い時間かもしれません。文献を探し、英語論文に苦戦し、ようやく目的を決めてもデータ収集が進まない、考察がまとまらないなど、何度も壁に当たります。より良い論文にするための指摘とわかっていても、査読者のコメントに落ち込むこともあります。しかし、もうひと踏ん張りして論文が掲載されたときは、晴れやかな気分です。
私にとって研究を行う上で、語り合い励まし合う仲間は不可欠です。皆さんも仲間を大事にして、研究を進めて論文を公表しましょう!研究を積み重ね、クリティカルケア看護のエビデンスを構築するのは、私たちです。
【研究報告】
「集中治療後症候群を早期発見するためのアセスメントツールの信頼性と妥当性の検証」2021年17巻p.11-20
名古屋学芸大学 伊藤 美智子
私は、平成28年度日本クリティカルケア看護学会研究助成を受け、「クリティカルケア看護領域新人看護師への終末期ケア教育プログラムの作成と効果の検証」という研究をさせていただきました。研究助成は、研究協力者の方への謝金や研究に使用する書籍・文献等に使用し、その結果として充実した研究を行うことができたとともに、学会発表や論文投稿につなげることができました。研究を行い、それを論文にし、投資するまでには時間もかかりましたが、研究助成期間から論文投稿までにも期間を設けていただいていたため、共著者とともに論文を遂行する期間に充てることができました。
1つの研究を遂行するには、費用も時間もかかりますが、研究助成をいただいたことで、計画的に予算管理をしながら期限内に研究を進め、論文を投稿するという一連の管理についても学ぶことができたと思います。大変感謝しております。ありがとうございました。
国家公務員共催組合連合会 横浜南共催病院 田村 直美
私は、平成26年度(2014年度)奨学助成を受け、2017年に「急性期病院に勤務する看護師の自律性と看護実践環境との関連」で論文掲載に至りました。
集中ケア認定看護師としてICUで勤務していた私は、管理学の立場から集中ケアを見つめなおしてみてはどうかという恩師の誘いを受け、大学院で看護管理学を専攻し研究に取り組んでいました。看護管理学を専攻しながらクリティカルケア看護学会の研究費助成に応募して良いものか迷いつつ、思い切って応募してみました。結果的には10万円の助成をして頂くことになり、感慨深い気持ちになったことを覚えています。同時に研究成果の発表と学会誌投稿という義務が発生した事で、気持ちを途切れさせることなく論文に向き合えました。査読を受け、論文を修正していく過程で身につけた思考過程は、臨床現場での複雑な問題を整理する事にも役立っています。そして現在も、病院で勤務しながら臨床研究に取り組んでいます。